オーストラリアで看護師をしているAkiです。ただの看護師ではなく「レントゲンが撮れる看護師」です。と言っても、放射線技師の資格はありません。
この記事では放射線技師の資格がないのに、なぜ看護師としてレントゲンが撮れるのかをお話します。海外の医療や看護に興味がある方やオーストラリアで医療従事者を目指す方のお役立てれば幸いです。
どうして看護師なのにレントゲンが撮れるの?
オーストラリアにも日本同様に、放射線技師 (Radiographer)という資格・職種があります。彼らが放射線のプロであり、レントゲン・CT・MRIなどの画像を撮影し診断に一役買っています。
日本の病院は世界的にもCTやMRIの保有率が高いことで知られています。ましてやレントゲンが撮れるのは当たり前ですよね。一方、オーストラリアではどの病院にも画像機器があるわけではありません。そのため、基本的に放射線技師が在籍しているのは都市にある大きな病院か、医療画像を撮影する施設になります。
国土が大きいオーストラリアでは、医療の地域格差も大きいので画像診断もすぐには出来ません。田舎の病院にもレントゲンの機械はあるものの、放射線技師はいません。そこで、レントゲンを撮るのは看護師なんです。
もちろんすべての看護師がレントゲンを撮っていいわけではありません。専門のコースを受講し資格を得た、田舎や僻地で働く医師や看護師のみがレントゲンを撮影出来るようになります。
コース日程
コースは4日間で構成されています。
1日目
- Radiation Physics and Protection(放射線物理と防護)
- Radiographic Technique – Overview(放射線画像技術)
- Radiographic Critique – Overview(放射線画像評価)
- Chest X-ray Lecture & Tutorials(胸部)
- Upper Limb Lecture & Tutorials(上肢)
2日目
- Lower Limb Lecture and Tutorials (下肢)
- Trauma Series Lecture and Tutorials (外傷)
- Computed/Digital Radiography Lecture and Tutorials (コンピューターデジタル画像)
3日目
- Directed Equipment Practical Sessions (機器を使っての練習)
- Exposure Manipulation Practical Sessions (露出操作)
- Regulations (規則)
- Examination Forum (試験の概要説明)
- Clinical Simulations (実技練習)
4日目
- Written Examination Film Reading(筆記試験)
- Clinical Simulation Examinations (実技試験)
- Modified Views Tutorial(画像診断試験)
コースの会場
会場はClare Country Clubで行われています。Clareはワイナリーがたくさんある地域で、休暇をゆっくりと満喫したい観光客に人気です。南オーストラリア州の州都のアデレードから、車で約2時間の場所にあります。
実際にコースを受けてみて…
コースの講師
講師は南オーストラリア州で一番大きい病院、Royal Adelaide Hospital (RAH)に勤務している現役の放射線技師です。
3名がメインの講師として放射線や撮影技術、画像診断の講義を行いました。実技練習がある時にはさらに2名が加わり、合計5名の放射線技師が講師として参加してました。
参加者の構成
私が参加した回の参加者さんは、総勢20名ほどで田舎や僻地で働いている医師や正看護師です。
多くは会場がある南オーストラリア州から来た人達でしたが、中には隣のビクトリア州から来た人もいました。州は同じと言えど、約800km離れた場所から来るまで運転して参加している人も。男女比はざっくりと3:7くらいで、女性が少し多めでした。
事前課題とテキスト
事前課題はテキストを見れば回答できるようなものでしたが、新しい勉強でボリュームもあったので正直簡単ではなかったです。
コースを受ける前に、テキストの共有と事前課題の提出が求められました。テキストは紙ベースではなく、Dropboxでダウンロードします。当日、紙ベースももらいました。
講義はこのテキストをベースに行われます。実技用のテキストもあり、実際の撮影に必要な情報がたくさんつまっていました。
実技練習
実技練習は3~4人のグループに分かれて行われました。
練習中は「角度は何度だったけ?」「どこに焦点を合わせるんだっけ?」と、メンバー同士話し合いながら和やかな雰囲気でした。各グループに講師が1人つき、わからない質問もすぐに答えてもらえるので納得しながら撮影技術を学べました。
画像診断の講義
実技練習をする時は全体を2つのグループに分けて、1つのグループは実技練習、もう1つのグループは画像診断の講義を受けました。
画像診断の講義と言っても、レントゲン写真から病理的な診断を行うわけではありません。この講義では、「その写真は診断を行うのに、有益な情報を示せているか」を話し合いました。
具体的には、コントラストが十分か、部位が切れていないか、必要な部位だけの写真になっているか(不要な部分に放射線を当てていないか)など、「診断出来る写真になっているか」を評価する練習でした。
ただ単にレントゲン写真を撮るだけではなくて、撮影した後に評価することも必要になります。せっかく撮った写真が失敗作だった場合、(放射線をまた浴びさせることになっても)撮り直した方が良いのか、それともコンピューター処理が可能なのか、判断しなければならないからです。
試験
コースを受けるだけで資格を取れるはずはなく、当然試験がありました。試験は主に3つの構成からなっています。
実技試験
事前に試験時間を伝えられるので、時間になったら会場に行きます。入室すると、試験官である講師からレントゲンの指示書が渡されます。患者さんの名前、誕生日、撮影部位が書かれているので、それを元にロールプレイを行います。患者さん役は講師ではなく、モデルさんが来ていました。
同時に2人の受験者が試験を受けますが、撮影部位は受験者それぞれ違います。試験では実際に撮影はしませんが、カセットの位置と照射部位を試験官が確認して評価されます。また患者さんの確認や、女性の場合妊娠の有無の確認など、安全を考慮しているかも採点基準に入っています。
画像診断の口頭試験
レントゲン写真2枚(胸部と骨盤)を見て、口頭で写真の評価をしていきます。試験官の質問に口頭で答えるのはめちゃくちゃ緊張しました。
筆記試験
筆記試験は、選択肢問題とShort answer (短い文章で答える問題)の2つのパートから構成されていました。撮影技術に関することや法律、写真評価など、問題は様々でした。
一番難しく感じたのは、「レントゲン機械からどのように放射線が照射されるのか?」「撮影後のカセットはコンピュータでどのように処理されるのか?」という問題でした。
合格基準
全ての試験の合計が70点以上で、合格となりレントゲンの資格を得ることが出来ます。
余談ですが…
コースにはたくさんの食事も含まれていました。モーニングティー、ランチ、アフターヌーンティーが、4日間ともふるまわれたんです。
どれも美味しく、毎回食べすぎました。おかげでコースが終わるころには体重が増えたと思います(笑)
宿泊先
4日間の集中講義なので、近隣に住んでいない限りはClare Country Clubに滞在します。コースの受講者は宿泊費が割引になります。
広くて清潔感溢れるお部屋だったので、機会があればプライベートでもまた滞在したいなと思います。
これから…
試験後は「絶対に落ちたー!」と思っていた私ですが、なんとか合格することが出来ました。
今現在は、資格者としての登録を待っているところです。無事、免許証が届いたらレントゲンを撮影することが出来るようになります。実際に撮影するようになったら、また記事にしてシェアしたいと思います。
今回記事を読んで興味を持ち、詳しい情報を知りたい方はぜひ公式サイトをのぞいてみてくださいね!
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